宝石珊瑚について

About Coral

宝石珊瑚と造礁珊瑚違いと特徴

一般的に「珊瑚」と一括りに呼ばれていますが、
宝飾品に使われている「宝石珊瑚」と海の生き物達が生息する
珊瑚礁を形成する「造礁珊瑚」は別物です。
まずは「宝石珊瑚」と「造礁珊瑚」の違いをご説明します。

宝石珊瑚の特長

主に深海(水深100m以上)に生息する硬質の珊瑚で、宝石珊瑚が含まれます。
宝石珊瑚が属す八放珊瑚は、ポリプ(珊瑚虫)の触手が8本に分かれ、多くは太陽の光が届かない深く冷たい海の底でひっそりと生息しています。数百ミクロン程度までの微小な浮遊物などを捕食して、ゆっくりと成長して行きます。その骨格はとても硬く(モース硬度3.5で人の歯と同等)磨くと美しい光沢を放ち、太古の時代から洋の東西を問わず宝飾品として愛されてきました。

宝石珊瑚の成長過程

太陽の光の届かない深い海の底で、長い年月をかけてゆっくりと成長して行きます。(これを<生木(せいき)>と呼びます)宝石珊瑚は広大で複雑な海底地形の所々に、疎らに点在しています。
やがて成長が止まった個体は徐々に海中の微生物によって侵食され(これを<枯れ木(かれき)>と呼びます) 最後には分解されて消滅します。

宝石珊瑚の人との関わり

古来より愛されてきた海の神秘宝石珊瑚は古くから、真珠と並ぶ海の宝石として
人々に愛されて来ました。ドイツの旧石器時代(約2万5千年前)の遺跡から珊瑚の玉が発掘され、古代ローマ人も子供の健やかな成長を祈って揺り籠に添え、また兵士たちは護符として身に付けて戦場に赴きました。遥々とシルクロードを辿って日本にもたらされた地中海の珊瑚は、奈良・正倉院の御物として今に伝えられています。

キリスト教や仏教だけではなく、イスラム教やヒンズー教においても、宝石珊瑚は装飾素材を超える重要な意味を与えられて来ました。 それ以外にも中国やインドでは医薬品として、またカルシウムが不足する土地では補給食品として珍重されたようです。
宝石珊瑚は3月の誕生石であり、特に女性の人生のドラマに寄り添って輝くジュエリーなのです。

造礁珊瑚の特長

ポリプ(珊瑚虫)の触手が6本かその倍数に分かれ、いわゆる「珊瑚礁」を形成するテーブル珊瑚、すり鉢珊瑚、石珊瑚等数百種類とイソギンチャク類が含まれます。六放珊瑚は体内に共生する褐虫藻という植物が光合成を行うので太陽の光を必要とし熱帯や亜熱帯の浅く(水深50mまで)暖かい(20℃以上)海岸で、多様な生き物たちに生息環境を提供しています。骨格は小さな穴が開いた軽石状で非常に脆く宝飾品には適しません。

造礁珊瑚の成長過程

太陽の光が射し込む浅く暖かい海岸で、1年間で10センチ近く成長する種類もあり、密集してサンゴ礁を形成します。体内の褐虫藻が二酸化炭素を吸収し、ポリプ(サンゴ虫)がプランクトンを捕食するなど、海の環境や生態系に深く結び付いています。サンゴ礁は魚たちの生息場所となり、海の森とも呼ばれます。

造礁珊瑚の人との関わり

海の生き物と人への大いなる恵み造礁サンゴは成長が速く、活発な生命活動によって分厚い石灰質の層が出来、サンゴ自体は更に上へ沖へと伸張して行きます。
また、破損・倒壊したサンゴは浜辺に打ち上げられ貝などの生き物の死骸と共に堆積して白い砂浜を作り出します。こうして形成されたサンゴ礁(リーフ)は天然の防波堤となって波の浸食を防ぎ、内側の穏やかなエリアでは多種多様な生き物たちが生息し、それを捕食する大型の魚 も集まって来ます。
サンゴ礁の豊かな生態圏は人間の生活と密接に関わっていますが、最近はスキューバダイビングなどのマリンレジャーを楽しむ人々も多くなっています。また採取が禁止され、国際的に保護されています。

宝石珊瑚の種類

赤珊瑚

赤珊瑚 アカサンゴ

Corallium japonicum

特長濃い赤色。小さな枝が密集して成長する。

通称アカ。特に色合いが濃い場合は「血赤」。(ちあか。英語で「オックス・ブラッド」)

産地西太平洋・土佐沖で採取される赤珊瑚は世界最高の評価を受けている。

桃色珊瑚

桃色珊瑚 モモイロサンゴ

Corallium elatius

特長赤に近い色から白に近いピンク色まで色調は幅広い。
宝石珊瑚の中で最も大きく成長する。(高さと幅が1mを超える原木も珍しくない)

通称モモ。淡いピンク色を帯びた物を「ボケ」(英語で「エンジェル・スキン」)と呼び、
極めて希少である。

産地日本沿岸を含む西太平洋の海域に広く分布。

白珊瑚

白珊瑚 シロイロサンゴ

Corallium konojoi

特長外見は桃珊瑚に似ているが、色調は純白に近い物から薄い桃色を散らしたもの、
また象牙に酷似した物(セピア色)もある。

通称シロ

産地中部太平洋(ミッドウェイ)及び日本沿岸から東シナ海、南シナ海を経て
フィリピンやベトナムに到る海域に分布。

地中海珊瑚

地中海珊瑚 ベニサンゴ

Corallium rubrum

特長色合いは赤珊瑚に似ているが、材質はやや柔らかい。
ダイバーが採取出来るほど浅い水深に生息しているので海綿等の侵食を受けている事が多い。原木は小型(高さと幅が20~30cmが限度)だが、色ムラは殆ど無い。

通称サルジ(イタリア・サルディニア島に由来)。
胡渡り(こわたり。※シルクロードを経て奈良時代の日本に伝来した事による。

産地地中海(サルディニア島、コルシカ島、ギリシア沖、北アフリカ沿岸)。

深海珊瑚

深海珊瑚 シンカイサンゴ

Corallium sp.

特長白の基調色の中にピンクが斑紋状に混じる(マーブル模様)。1000mを超える 深海底から水揚げされる原木は急激な水圧と温度の変化に晒され「ヒ」と呼ばれる疵(クラック)が生じる事が多い。

通称シンカイ

産地中部太平洋(ハワイ~ミッドウェイの海域)。

Jewellery

Jewellery ジュエリー珊瑚

宝石珊瑚のジュエリーは
幅広い年代層に支持され、宝石珊瑚の希少性とも相まって
普遍の価値を生み出してきました。
地域や時代により
宝石珊瑚を使用した宝飾品にも違いがあります。
日本では和装に彩を添える宝飾品として、
時代を超えて愛用されています。

Jewellery

宝石珊瑚のジュエリーは、宝石珊瑚素材を最大限に生かした丸玉を使ったオーソドックスなリングやネックレスが根強い人気があります。
現代的なファッションリングは、加工しやすい特性を活用し多様な美しさを表現しています。

宝石珊瑚の美術工芸品

和装に彩を添えるかんざしや帯止めには、繊細な職人の加工技術が遺憾なく発揮されます。
その匠の技術と宝石珊瑚の淡い色彩が相まって芸術品ともいえる作品に仕上がります。

美術工芸品と作家

宝石珊瑚の加工技と工程

1原木選材

宝石珊瑚の原木の形状、色、質などにより、原木をジュエリー・立体彫刻・平面彫刻・和装小物など様々な用途に選別します。

2デザイン

原木の形に合ったイメージを図柄に合わせて、材料にデザインして形取りをします。

3カット

電動式ダイヤ盤の切断機を使用してデザインに不要な部分を切断します。カットされた宝石珊瑚は、そうの用途に応じた加工を施されます。

4荒彫り

デザインした形状に合わせておおまかな形に荒く削り取ります。技工士が使用するリューターという加工用具で、熟練した職人が手先の感覚と頭の中のイメージをもとに彫りを行います。

5仕上げ彫り

より細かい部分の加工は、20種類以上の仕上げ用工具を用いてより細かいアクセントをつけます。
最後に粒子の異なるサンドペーパーを掛けて彫りを終了します。

6磨き仕上げ〜艶出し

希塩酸に製品を浸し、その後、水で冷やしたり、湯に浸けたりする作業を反復して20分程繰り返すと宝石珊瑚本来の光沢が引き出されます。そして最後に仕上げ磨きを行い完了です。

宝石珊瑚コラム

宝石珊瑚に関わる専門家の視点で、
一般の方にも分かりやすく珊瑚に関する情報を発信していきます。